Sunday, April 27, 2008

ジャズと言葉のはなし

来週の土曜日(5/3)に僕はウッドベースを弾く。db(デシベル)というバンドで制作したジャズソングスを演奏するのだ。
8年前、モテたくて、弾けないベースを弾くために大学のジャズサークルに入会した。だってかっこいいよね、ウッドベースを弾くその姿は。それから数年やってみてなんとなく、ジャズはモテるための表現手段なのではなく(実際にモテることはなかった)、「コミュニケーション活動そのもの」なのだと理解するようになっていた。ジャズは即興で音楽が展開される。演奏する前に、演者はどの音をどのように、どんな順番で奏でるのか、を正確には知らない。必然的にアドリブでコミュニケーションをとりながら演奏が進んでいくことになる。誰かの音に僕が音を返し、その音にまた他の誰かが対応し、その横ではひたすら音を出さずにうなずいている誰かがいる、なんていう具合に。何か特別な世界のことを書いているようだけど、実は至極、日常的なことだ。よく「ジャズは会話である」というような比喩を耳にすることがあるけど、これはもう比喩なんていうもんじゃなく、ジャズも会話もどちらもほぼほぼ同じ現象なのだといってよい。だって僕らが人と話をする際に、どんな言葉を発して、どのようにしゃべり、どんな順番で話題が移り変わっていくのか事前に知りえないし、相手が話す言葉に反応して何かを返し、また相手がそれに返す、、、、ということが永遠と繰り返されるのだから。ジャズの演奏なんて聞くと楽器の上手な人が難しい音をとても早くしかもアドリブで!演奏する常人離れした行為のように思われるかもしれないが、本質的にジャズはとても日常的な行為だ。もちろん赤ん坊が上手に言葉をしゃべれないように、基本的な言葉を覚える必要がある。あるいは僕らが外国語を覚えるときのように、ある程度の訓練が必要になってくる。

さて、ジャズを演奏するために「基本的な言葉」というのは具体的にはどんなものなんだろうか。「おはようございます」、「左様でございますか」、「最近憂鬱です」、「鬼に金棒だね」、「換骨奪胎」、、、、いったいどんな言葉のセットがあれば、会話可能なのか。一般的に知られているモダンジャズは、会話に求められる言葉のセットがハイレベルだ(僕にとって)。天衣無縫、綱紀粛正、二律背反、、、などの難しい単語そのものもさることながら、さらにその組み合わせ方、他人の言葉への反応の仕方などもより高度で、華麗な表現で会話(演奏)している。(僕からはそうみえる)。例えていうならば、先人の名言や美辞麗句、かっこいい言い回しを駆使して熱く語りまくるスピーチのような、そんな厳格さと情熱を持ち合わせた語り口だ。僕は6年間のジャズサークル活動の果てにその言語を全く理解することができず、現在のところ僕の身体に真っ当な方法で根付いているとはいい難い。ところがモダンジャズという音楽はそのような語り口で表現し会話することが制度化されていし、演奏者はそのような語り口を暗黙のうちに求められる(大学のサークル活動でさえ)。というよりむしろその難しい語り口で表現するエクリチュールこそ、モダンジャズたらしめてるものなのだ。でもその話し方じゃないと会話ができないわけではない。より身の丈にあった語彙でのコミュニケーションは不可能なのだろうか。仮に可能であったとしても、その音楽はモダンジャズほどに魅力的になり得ないのだろうか。普段僕らが行っている会話はより単純で、簡単な言葉の連続だ。その普段話すような語り口で物語が編めないだろうか。この2008年に27歳を迎える僕らが会話で自然に使う日常語というは、「っていうかさ」とか「ラーメンズ的な」とか「それうけるー」とかだったりするのだ。じゃあその語彙で演奏してみよう、コミュニケーションをとってみよう、そしてその形を整えてみよう。っていうのが、5/3に演奏する音楽なのだ。ろうと思う(他のメンバーはどう思っているかわからないけど)。音楽なんてこんな言葉で片付くはずないんだけど。もっと豊かで様々な感覚が繊細に混じり合った体験なのだけど。言葉にするとこうなる。

さらに今回は、「サックス」や「ギター」とならんで「言葉」の演奏者がいる。まずは下のブログを読んでみてほしい。
http://d.hatena.ne.jp/askrchaos/
「あすくれいくこ」と名付けられたこのブログは僕の友達が更新している。ちょっとこれを読んでびっくりしてしまって、その後彼と話をしてみると、彼は音楽を聞きながら詩を書く!という不思議な訓練もしているという。音に反応して言葉を発していく。それはジャズかもしれない。どうなるかわからないけど、とりあえず一緒にやってみる。もともと僕らが作った曲はBGM。つまり何かのバックグラウンドで流れるべき音楽だ。コンテンツが「インラインスケートの映像」から「言葉」にかわったというだけのことなんじゃないか、と理由をつけておく。これまでの練習では、まあなんとか面白いものになりそうだ。

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db,shortxshort presents
「インラインスケートDVD “the Stem” パーティー」

【日付】
2008年5月3日(土)

【場所】
新宿ネイキッドロフト
http://www.loft-prj.co.jp/naked/

【出演者】
db+こつじ(ライブ)
http://www.myspace.com/dbdatesin
西原直樹 (shortxshort)
http://www.shortxshort.com
峯遼祐(DJ)

【時間】
OPEN18:00/START19:00

【料金】
前売/当日ともに1500円(+1drinkから)

2 comments:

Anonymous said...

この文章を読んでなるほど!
と、納得してしまった。
最近の俺は妙にタカオちゃんに素直である。

君の発する言葉にも説得力が出てきたということか。

ごめん、ライブ行きたいのに、また行けそうにないよぅ・・・。

DVDを作った際にはぜひ購入いたしますので
ご一報を!!!

da!da!da!datech! said...

ありがとう!DVDはもう発売してますよ。
http://www.sv-works.com/?pid=6562683
ここでもあるし、西原くん(http://www.shortxshort.com/blog/)直接メールを打てもらってもかえると思います。